「いい感じの商店街で暮らしたい!」と思った時に読みたい本

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花咲小路四丁目の聖人 (ポプラ文庫 日本文学 227) [ 小路 幸也 ]
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花咲小路シリーズ  小路 幸也[著]

商店街に行こう!

生き生きとした賑わいのある商店街は、とっても良いものです。

個性的なお店がミチッと詰まった様子は可愛いですし、小さいからこそ居心地が良いお店というものもあるものです。

本日紹介する小路 幸也(しょうじ ゆきや)先生の「花咲小路シリーズ」では、まさにそのような商店街が舞台となっています。

そこで暮らす住人たちが紡ぐ、謎と人情の物語。

ちょっとそこまで出かけるように、その物語を覗いてみませんか?

店も人も

花咲小路シリーズは花咲小路商店街に暮らす住人たちを主役に据えた、いわゆる「人の死なないミステリー小説」です。

舞台が商店街なだけあって、出てくるお店や職業は多種多様。
そこで働く人たちも多種多様な「特技」を持っており、潜んでいた事件や解決の糸口を掴む切っ掛けとなります。

2024年12月にシリーズ8冊目となる「花咲小路二丁目中通りのアンパイア」が発売されましたが、どの巻から読んでも楽しめる優しい構成となっているので、これから参入する人は気になったタイトルから読んでいくと良いでしょう。

…と書きはしましたが、私はやはり一作目の花咲小路四丁目の聖人から読むことをお勧めします。

というのも「聖人」の主人公の矢車 聖人さん、通称セイさんはシリーズを通したお助けキャラ的な立ち位置にいる人物であり、このセイさんのことを知ってからの方が、他のお話もよりスムーズに没入できるだろうと思うからです。

シリーズが長期化すると手を出すのに躊躇することもありますが、「花咲小路シリーズ」は一冊ごとに主人公が変わるので飽きることがありません。

そのうえ本を通して一軒一軒お店を開拓しているような楽しい気分になれて、お得感を感じるちょっと珍しい作品となっています。

住んでたっけ?

過去キャラの再登場は熱いものです。
そして、花咲小路シリーズでも以前出てきた人物に割とよく再会できます。
みんなご近所さんですからね。

その中でも頻繁に会えるのがセイさんと「松宮電子堂」の北斗さんです。

先ほども紹介したセイさんは日本に帰化したイギリス人。大地主の家系であり、現在の職業はモデラー。器用で誰よりも多彩な能力を持ち、大人も子供も頼れる相談役として人気の老紳士です。

北斗さんはズバリ、情報屋です。
電気製品のお店「松宮電子堂」の跡取り息子であり、商店会事務局長の立場を活かした人脈と電子機器を活用して情報を集める、映画の凄腕ハッカーみたいな印象を抱くお兄さんです。

シリーズの時間軸は、前後することなく直線で進んでいくのですが、そこに人物や店が再登場するとどうなるか。

自分も商店街で暮らしてきた一員になった気がします。

商店街で暮らし、ふらっと立ち寄った店で住人たちと一緒にちょっとした事件に遭遇する。
顛末を見届け、ささやかな祝杯をあげたそのお店にまた別の住人と立ち寄る。

「和食処あかさか」など、もはや行きつけのお店のように思えてきて、お料理の香りまで感じる気がします。

そんな風に巻を重ねるごとに商店街の解像度は上がり、同時に広がっていきますので、この素敵な感覚はぜひ皆さんと共有したいですね。

ありがたいおせっかい

「花咲小路シリーズ」に明確な悪人はほぼ出てきません。

住人たちが遭遇する謎は、平凡ながら懸命に毎日を生きる人たちの人生から発生する「誰にでも起こりうるかもしれない」共感性の高い問題です。

それを心配し、何とかしたいと奔走する住人達。
人情とおせっかいから生まれる行動は、ご近所さんの幸せに繋がる結末となります。

人との繋がりが希薄になったと言われるようになって久しい現代。

「花咲小路シリーズ」で愛すべき住人の皆さんと、丁度いい距離感で付き合ってみませんか?

ではまた。

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