
〈𠮟る依存〉がとまらない 村中直人[著]
𠮟られるのは嫌いですか?
私は嫌いです。というか大抵の人は嫌いですよね。
それは当然である上に、本書では「叱る」を次のように定義しています。
言葉を用いてネガティブな感情体験を与えることで、相手の行動や認識の変化を引き起こし、思うようにコントロールしようとする行為(本文 P34抜粋)
始めた出会った「𠮟られる側」についても書かれた本。
その内容と感想について、少しだけお喋りにお付き合いください。
「𠮟られる側」の視点
著者の村中さんは臨床心理士・公認心理師であり、発達障害の方やその周りの方々への支援活動をされています。
専門家の著書は正直読みにくいと感じるものもありますが、この本は科学・心理学の知識を交えつつも、非常に分かりやすく読みやすい内容になっていると感じました。
この本と出合ったのは、転職先で人間関係に悩んでいた時でした。
教育係になった方の物言いがとにかく高圧的で、「何でこんなに怒られないといけないんだろう」と毎日思っていました。
自分が覚えるべきことが出来ていないからではあったのですが、とにかく言い方が嫌で嫌で…。
反発心が芽生えてこちらの機嫌も悪くなるし、それが相手に伝わってさらに悪化する悪循環に陥っていました。
そんな時に出会ったこの本。
何より嬉しかったのは、「叱られる側」について書かれていることです。
私は叱られると「委縮して、頭がぼんやりしてくる」「反発心が湧いてくる」といったことを実感していたのですが、この本にはそれがどのような脳内メカニズムによって起こるものなのか書かれています。
「自分が感じていたことはキチンと理由がある。それは、自分が未熟で幼稚だからではない」
しっかりとした根拠を知ることで、自分が感じていることは間違いではないと理解して、安心することができたのです。
「叱る」は効果がない!!
この本のもう一つの嬉しいポイントは「叱ることは効果がない」と言葉を変えて何度も言ってくれるところです。
「𠮟られる側」と同じく、「叱る側」についても様々な研究やメカニズムが紹介されています。
その中で特に印象的だったのは「『叱る』という行為には『処罰感情の充足』という強い報酬がある」という部分です。
無意識であれ、叱ることそのものが気持ちよくなっていることがある。ということですね。
叱られる側からすればたまったもんではありませんが、文中でも「誰にでも起こりうること」とされています。
そしてそれを「DV」「スポーツ指導」「虐待」「学校教育」「中絶」「バッシング」「犯罪からの更生」といった様々な社会問題に絡め、それらが起こる仕組みについて簡潔に解説しています。
そのうえで「生活の中で全く叱らずに過ごすことは現実的ではない」として、「適切な叱り方」「叱るを手放していく方法」の実践的なノウハウまで教えてくれるのです。
誰の身にも無関係でないからこそ、誰もに必要な知見が詰まっていると感じました。
ご家庭、学校、社会まで!!
日々お疲れ様です。
誰もが「叱る側」「叱られる側」両方の立場に置かれる生活を送っていることでしょう。
そんな生活の中で感じる「叱る」についての不満、不安、恐怖、疑問。
そういったものを少しでも理解し心に余裕を持たせることを手伝ってくれるのがこの本です。
皆さんが理不尽や自己嫌悪を感じたとき、この本を鏡を見るように読んでみてはいかがでしょう。
それでは、良い読書を。
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