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名探偵のいけにえ-人民教会殺人事件- 白井智之(しらい ともゆき)[著]
推しよ、輝け!
人生に艶を与えてくれる「推し」。あなたに推しは存在するでしょうか?
私の現在の最推しは、とあるVチューバーさんです。かわいい容姿に垣間見える知性、そこに顔を出す古風な価値観のギャップがたまらない方です。
あなたの推しは芸能人などの「遠い人」、日常で会える「近い人」どちらでしょうか?
「近い人」推しのあなたがタイトルのような感情を抱いた時、この本の主人公に共感できるかもしれません。
理想の探偵を部下に持つ所長
「名探偵のいけにえ-人民教会殺人事件-」の主人公は「大塒宗(おおとや たかし)」。叔父に憧れて探偵となり、浮気調査を中心に請け負う“平凡な”探偵です。
その大塒の部下である大学生の「有森りり子」。とある目的のために大塒の部下となり、類まれな才能を発揮して事件を解決してきた実力派の“天才”探偵です。そんなりり子が学業のためと言って渡米し、そのまま行方不明に。しかも大塒には旅の目的を偽っていたことが発覚します。
りり子の目的が宗教団体「人民教会」だと突き止めた大塒は、自身もまた渡米を決意して…、と物語は進んでいきます。
自慢と羨望
小学生時代、私はお絵描きと作文が好きだったのですが、より出来るクラスメイトとの出会いに小さな挫折を味わった思い出があります。自分が得意だと思っているジャンルで、自分より秀でた人に出会う。自分では努力しても追いつける気がしないし、また追いつく努力を重ねる情熱もない。そのように思って羨むばかりでした。
大塒は浮気調査がやりたい探偵です。尾行の技術に矜持を抱いています。
しかし、りり子の影響により浮気調査以外の事件にも関係することになっていきます。
大塒も事件の解明を行いますが、りり子には敵いません。その上推理や探偵の心構えについてダメ出しを食らってしまいます。
キラリと光る才能への嫉妬。しかし同時に大塒はりり子に対して誇らしくも思っていました。
「この才能豊かな人の近くに居られて嬉しい」。私もクラスメイト達に思っていたのと同じようなことを、大塒も感じていた。この部分こそ私が本作に抱く最も強い共感ポイントです。
推しよ、いつまでも輝け!
現在どうしているかも分からない。そんなかつての光るクラスメイト達には、今も元気で才能を発揮していてほしいと思ったりします。
でも、それが都合のいい押しつけだということはキチンと分かっていますよ。
大塒も経験を積んできた大人ですし、もちろん弁えています。
その上での大塒の選択、行動を見届けてあなたは何を思うのか。
良ければ感想を聞かせてくださいね!では、これにて。
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